2016年05月05日

卵巣がん検診の有効性にはいまだに議論がある

UKCTOCS は、閉経後女性の卵巣がん検診の有用性を調べたランダム化試験であり、約20万人を対象に、10万人を「検診なし」(コントロール群)、5万人を「経膣超音波のみによる検診」(USS群)、5万人を「CA125と経膣超音波併用による検診」(MMS群)の3群に分けて比較した非常に大規模な臨床試験である。この結果、Primary endpoint である卵巣がんによる死亡にはコントロール群に比較してUSS群およびMMS群に有意差は認められなかった。しかし、ランダム化後7-14年という長期予後に限定すれば、USS群で21%、MMS群で23% mortality を(計算上は)減らせるとされた。USS群よりもMSS群の方が false positive で手術を行われてしまう可能性は低い(USSで false positive が 50/10万、MSSで14/10万)。

この試験は、もちろん極めて有意義であるが、primary endpointで有意差が出なかったためにsubgroup解析を行っているところが苦しい。スクリーニングで卵巣がんを発見できたのが、USS群で51%、MMS群で59%しかないのも寂しい(つまり、卵巣がんであっても検診で半分近くは見逃す)。また、MMS群は、CA125を単純なcut-offでスクリーニングせず、「risk of ovarian cancer algorithm (ROCA)」というわかりにくい手法でスクリーニングしているという問題点もある。ROCAはAbcodiaという企業が行っているスクリーニングの登録商標で、triple marker検査のように内容についてよくわからない点もある。しかも、この論文の筆頭著者を含む著者らはAbcodiaの株主だと「Declaration of interests」にある。この論文の内容がもっと画期的なものであれば、Abcodiaとその株主たちは莫大な利益を手にしたことであろう。だが、有意義ではあっても画期的というほどではなかった。

日本では、多くの病院や診療所で行っている子宮頸がん検診で、「ついでに」経膣超音波も診ているのではないかと想像する。それなら上のUSS群(年1回の経膣超音波検査)に近く、今のところこれで充分ではないかというのが私の感想だ。
ラベル:臨床試験 検診
posted by Junji Mitsushita at 16:40| Comment(0) | 卵巣癌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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